美人と猫 懐月堂安知
大々判墨摺絵 56.0×30.5cm
落款:日本戯畫懐月末葉安知図
板元:伊賀屋勘右衛門
所蔵:ギメ美術館
懐月堂の始祖は安度であります。その堂号を冠した度繁・度辰・度種らと伍して安知があるが、「度」を冠するものと「安」を冠するものとでは、始祖安度との師弟関係がちがうのかも知れません。あるいは安知は安度の肉系の出自と見るべきではあるまいか。安度が江島生島事件に連座して遠島となり、正徳四年(1714)に画を断ったあと、安知が懐月堂流の正系の位置にありたかも知れません。安度は翰運子といういきな遊印を用いたのに、安知は長陽堂と称しているのを見ると、それは安度が斯界を去ったあと、この堂号を用いて独往の姿勢をとったかも知れません。安度の印を併用するところにも何か仔細がありそうな気がする。
この墨一色摺りの美人図は珍しい遺作であります。やや豪快さを失うたこの版画には、丹の強烈な施彩が予定されていたでしょう。
懐月堂安知 長陽堂安知 Chouyoudou Anchi