豊国豐広両画一二候・6月 弐 豊広
大判錦絵 三枚統 37・3×25・1cm
落款:豊廣画
板元ふ圃(山田屋三四郎か)
「四条の川原すずみとて、夕月夜のころより有明過る頃まで、川中に床をならべて、夜すがら酒のみ、ものくひ遊ぶ川風や薄柿着たる夕すずみ はせを」と、元禄十一年刊の『獄綴集』(風国撰、芭蕉の遺稿句集)にある所を見ますと、京四条河原の夕涼みの慣習は古くからあったものらしいです。また『都名所図会』(秋里離島編、安永九年刊)によると、この夕涼みは諸種の娯楽施設の催しも添えて行事化し六月七日に始まり同十八日に終わることになっています。京らしい風物詩であります。豊広は同門の豊国と分担制作した連作「両画十二候」の六月にこれを採り上げました。宵闇が川面をおおい、床の上に、淡い雪洞の光を受けさざめき興ずる客と芸妓婢女たちの様子を、豊広は持前の雅品ある筆致で描き分けています。各図の人物群中に一人ずつ配した婢女のポーズが互いに脈絡を持ち、律動的な動きをこの絵に与えています。水流の異常な動きがこの絵を強く印象づけます。
歌川豊国 Utagawa Toyokuni