三味線の糸替え 国政
大判錦絵 37・1×25・1cm
落款:國政画
板元:上村与兵衛極印
これは国政の七分身美人中、最も動きのある絵。同じ版元でこれと向き合う形の七分身美人図があり、裳小紋の衣裳で、三味線を低目に持って弾じていますから、一対作品として誰かをモデルに作ったものかもしれません。こちらの美人の衣裳が縦縞の模様にしてあるのも対比を考えたものかと思われます。画面全体に大きくくの字なりに収めたポーズがしっくりとあてはまって安定感があります。三味線の転6 を支える手つきに力感があり、写生観察の鋭さを思わせます。砥めてしめりをくれている三味線の糸が、支えた指を境に、片方は幾分張りを見せ、他方の末端にはちぢれを見せている描写が何とも細かく、ここにも写実に徹しようとする国政のゆきとどいた観察眼と、これを表現した一種の野心的意欲が端的にうかがえます。作画期は前図同様寛政八年頃。
歌川豊国 Utagawa Toyokuni