八代森田勘弥の駕篭昇鶯の次郎作 写楽
大判錦絵38.3×25.2cm
落款:東洲粛寫囃画
板元:蔦屋電熹
所蔵:ギメ美術館
この画面は、桜田治助が天明八年(1788)に作った常磐津『戻駕色相肩』をもじって『敵討ち乗合話』のなかの一幕『花菖蒲思 莽』に演じられたもの。『戻駕』で浪花の治郎作に当たる役をこの勘弥が演じ、相手役の幸四郎の駕龍昇ほととぎすの五郎八は実は志賀大七といった趣向です。
なお禿の役は宮城野になり富三郎が演じました。この三人が織りなすこの一幕は大好評でした。
森田勘弥は、江戸三座の一つ森旧座の座元大夫で、八代目は役者も兼ねていました。次郎作の袖に両手をつつむポーズは、『戻駕』の代表的な型であったらしく、他の『戻駕』を描いた場面に出てくるのとまったく同一です。しかし写楽は同一のポーズを描いても、ここにはほかにみられぬ芸術的香りの高い作品として表現しています。画面の大部分を埋める着物の柄は、貝紋り模様で、上にはおった袖なし羽織は、束ね熨斗をあしらい、美しい舞台を想像させるに充分な色彩を用いています。
東洲斎 写楽 Toushusai Sharaku