都座口上図 写楽
大判錦絵37.3×24.4cm
落款:東洲粛寫楽画
板元:蔦屋重三郎極印
所蔵:パリ国立図書館
貫禄あるでっぷりとした老人が口上を読み上げていますが、その紙面に「口上 自是二番目新板似顔奉入御覧候」とかかれています。これはいかなる意味をもつのでしょうか。写楽の第一期作品として寛政六年五月の三座を描いていますが、これらは半身像大判黒雲母摺り作品ばかりでした。しかしこの口上図から白雲母摺りの全身像を描き始めます。また大判のほかに細判も混入してきます。このような新様式で描くことの意味をこの「二番目新板」は示しているといえましょう。
老人の柿の紋から都座関係の者とわかり、従来頭取の像とみられてきましたが、吉田嘆二氏や溝口康麿氏の研究により、都座の口上役をつとめていた篠塚浦右衛門であることが判明しました。三色でまとめた画面は美しく、配色の美をみせています。
柿の寿紋の描写は、図案的にもすぐれていますし、特に顔面描写に一段の進歩をみせ、写楽芸術がますます円熟味を加えてきたことを知ります。口上書に文字の全然ないもの(メトロポリタン美術館蔵)もあります。
東洲斎 写楽 Toushusai Sharaku