六玉川・丁子屋内雛鶴 歌麿
大判錦絵揃物 37.7×25.2cm
落款:班麿画
板元:蔦屋重三郎 極印
図の上部のコマ絵に、培東亭の六玉川にちなんだ狂歌が書かれています。狂歌中に。八朔の衣桁”という文字がみえるが古原年中行事の八朔(険暦八月一‐)には白装束をするのが常ですから、雛鶴が衣桁にかけて眺める衣裳は、そのための晴着ではなかろう。
この雛鶴は、新古原の江戸町二丁目の大敵、鶏舌楼丁子屋長重郎の筆頭女郎で、古風な瓜実顔の美人であったといいます。
描かれた顔立ちは下あごの線がふっくらとして、このいい伝えに近い顔ではありますが、やはり歌麿の理想とした美女として描かれています。本図ではこうした顔立ちよりも、夏の紗の着物に無造作に細帯を締めた彼女と、その背後のうす藍であったであろう単衣を着た朋輩とを描いた構図法が面白いです。また彼女たちを画面中央より左の部分に収め、右半分を衣桁にかけた紫地の貯物で山:めさせた配置の巧みさが、暖か味ある黄地に砂子を散らしたバッタにはえて、画を大きなものに感じさせます。
喜多川歌麿 Kitagawa Utamaro