柳下美人 春英
絹本著色 91.0×32.8 cm
落款:春英面
所蔵:フリヤ美術館
この春英の画幅は、一八九九年にフリヤ氏が集蔵したものです。春好と同橡に春英の肉筆画の遺作もきわめて稀れです。スターン博士もフリヤ美術館創立五十周年記念浮世絵展のカタログの中で、この絵について記しておられる通りであり、また役者絵では豊国など後輩に大きく影響を与えていますが、美人画はあまり描いていませんし、肉筆となればさらに遺存しないでありましょうから、この一作も美人画作品の標準となるものといえます。
この美人図は、小僧をお伴に外出した女が、汗のにじむ暑さで、風そよぐ柳の下に愁い、涼を納れたあと、帯をしめなおすというた風姿を写すものでしょう。スターン博士も指摘するようにデリカシーの少ない少々品の悪い女でしょう。また同氏はこの絵に湖竜斎の影響を検出している点も私は大いに興味を覚えるところで、直接の師匠春章のあの卓出した肉筆の技量にくらべますと、師風がほとんど認められないのに留意して、春英画の判断をしなければならないでありましょう。
勝川春英 Katsukawa Syunei