小式部内侍 無款(治兵衛)
大々判墨摺筆彩色 59.6×三ニ・五cm
落款:なし 板元:不明
所蔵:リッカー美術館
天満天神宮の扁額、奉懸御宝前とある花鳥の絵馬がある社殿を背景に、
小式部内侍
なけきかふ きゝに北野の ほとゝきす
と有けれは ゑむまに 有けるほとゝきす
さへつりけるとなり
まことに世にかくれなき うたのめいしんなり
とあります。
亀甲つなぎや牡丹ちらしの派手な元禄模様の衣裳をつけた女性、薄手の帯をきりりと締め上げて懐紙をのぞかせる。片手を袖の内にする七三のポーズが、この頃流行のコケティッシュ表出と見え、多くの画家が試みています。師宣の意匠の寛濶なのに比べて、この人はおそろしく扮装は細やかであります。
線描は細麗だがシャープさは欠け、施彩を予想しての作風と言ってよいでしょう。それにしても第18図とは顔立ちがちがっています。
杉村治兵衛 Sugimura Jihei