役者絵 文調
中判錦絵 25.6×18.6 cm落款:一筆斎文調画 板元:不明
所蔵:東京国立博物館
初代市川高麗蔵の花守喜作と二代山下金作の喜作女房お梅(「鶴森一陽的」明和七年一一月中村座」)
二代山下金作(天王寺里里虹)はもと大阪の産、京都で十六歳のとき山下金作と名乗りました。二十歳のころから江戸へ下り、中村座につとめました。明和元年には上上吉の位にのぼった女形の名優で、寛政十一年、六十七歳で没するまで上方江戸を往復して出演することはなはだ多く記録されています。掲出の図は、明和七年十一月、中村座上演の『鵺森一陽的』に、高麗蔵の花守喜作の女房お梅として共演、また常磐御前も勤めたときの舞台姿を描くものでしょう。髪型からいっても明和ごろの「かもめたぼ」の特徴が現れています。またこの芝居に二代市川門之助が弁の内侍をつとめました。
明和七年といえば春信の没した年で、この年に『絵本舞台扇』の名作を刊行しており、そのころすでに文調は最盛期を迎えていました。この図などは春信風をきれいに脱却して彼独自の芸風をみせています。保存格別の絶品です。
一筆斎文調 Ipitsusai Buncho