当世美人色競 山下花 政演
大判錦絵 揃物 37.1×25.1 cm
落款:北尾政演画 板元:不明
所蔵:東京国立博物館
「当世美人色競」のシリーズで描いたもの、この揃いがどうなっているか、全貌は明らかでありません。これも天明・寛政の交の作でしょう。山下の路傍、うすくらがりに半畳を敷いて店。ひろい世間にこの狭い城ともいうべき一国を構え、上畳の佳人歌仙よろしくたたずんで、ひきよする煙草盆、一服やすらぐところ、涼みの螺客ならでは屑越しにささやくのは、心やすらかの朋輩でもありましょうか。辻君・橋姫・市姫・夜鷹・半畳かぞえて二百に達するという遊び女の呼び名は、文字の国とは言え何という男の恣意な世界でしょう。人権軽視の封建社会ですから、女性軽侮のこのような非人道をひき起こしたといいきれるかどうか。俗文学者として世情を深く探った政演こと京伝は、ドブのような暗くきたない中に美をみました。
北尾政演 Kitao Masatora 山東京伝