河岸船美人 豊広
幅広柱絵判錦絵70・2×25・1cm
落款:豊廣画
板元:不明
所蔵:座示国立博物館
前図と同じ様式の掛物絵ですが、人物が前図が斜めに背を見せて見上げているのに対して、こちらは体をひねり気味に前面を見せ、顔は見おろす形をとって、この二図は対幅の様式をとっているように思われます。川風にそよぐ柳と美人の薄物とで夏を表す点、季節も前図と共通します。当図は細長い画面に対して、振り袖を極端に長めに描いた画面処理が功を奏し、縦に流れる線の多さに対して、横に屋根舟の線で切った構成も変化を生んでいます。美人も襖橋から片足を舟中に踏み込んだスナップで描かれ、総体にこの絵には動的の分子が多いようです。衣裳の質感を表すための版画技法はかなり入念に施されています。上衣に淡い鼠色でゴマ摺りをかけ、下着の薄紅がほんのりとにおうあたり、美人画の骨法を心得た豊広の手腕がうかがわれます。薄物が重なってできる隈に板ぽかしを用いた効果もよく出ています。
歌川豊国 Utagawa Toyokuni