琴棋書画・画 豊春
大々判錦絵 揃物 48・6×36・3cm
落款:歌川豊春画
板元:鱗形屋孫兵衛
所蔵:塞示国立博物館
豊春の数少ない美人画錦絵中、ごく初期に属する琴棋書画四枚揃いから、画を選んで掲出しました。主人公とおぽしい美人が描き上げた色子の絵を婢女が掲げ見せている態であります。美人の髪型が、いわゆるかもめ惹を残しながら髪がやや張り出したあたり、明和末からむしろ安永にはいると見られる作品であります。人物に春信スタイルの濃厚なのも時代の故でしょう。各人の位置に変化をつけた構図は動きもあって面白く、四枚申では一番目が惹かれます。しかし、この揃い物中「書」が明和の駒井美信の作品の構図をその壇ま借りている(本文の豊春の項参照)ところを見ますと、この整った図にも粉本があるかもしれません。浮世絵師の誰しもが行なうことで咎め立てするまでもありませんが、豊春習作時代の修練過程を知る上に検討はしてみたい課題であります。また粉本があるにもせよ、この四図を通じて感じる豊春の作の規模のおおらかさは、一流の始祖の素質をうかがわせるものがあります。
歌川豊国 Utagawa Toyokuni