ニ代市川高麗蔵の志賀大七 写楽
大判錦絵37.0×24.0cm
落款:東洲斎寫楽画
板元:蔦屋重三郎極印
所蔵:リッカー美術館
紅の隈取り、緑の着物の裏、鞘の黄、あとはほとんど黒で単純な色からくる印象がきわめて強いです。それに松下造酒之進を殺害しようとする凄みがにじみ出たシーンで、背景の黒雲母がこの不気味な雰囲気をさらに高め、写楽ならではの画面を形成しています。
高麗蔵は、享和元年(1801)五代目松本幸四郎を襲名する役者で、天保五年(1834)には「古今無類」の最上極位に達し、三都随一の役者とほめたたえられました。俗に「鼻高幸四郎」と異名をとったごとくこの絵のように鷲鼻で、高麗蔵の顔をよくとらえています。はじめ和事を本領としたのですが、のち火悪に転じてかえって名を轟かせ、仁木、光秀、師直などが当たり役であった。このような当たり役からすれば、志賀大七の敵役は適役だったといえましょう。当時の『評判記』は、この大七の役について「立ち役上上吉」とたたえています。絵では落款が画面にむかって左下方にありますが、左上方に描いたもの(高橋誠一郎氏蔵)もあります。
東洲斎 写楽 Toushusai Sharaku