二代大谷鬼次の川島治部五郎 写楽
細判錦絵31.3×14.4cm
落款:東洲斎寫南画
板元:蔦屋重三郎極印
所蔵:東京国立博物館
背景が闇夜を示す鼠色で、人物着衣が緑、それに刀の鞘と轜絆に施された赤が点々と五ヵ所にわかれ、全体の簡素な配色にアクセントをつけています。于拭の頬被りした工合や左手の鞘をにぎる乎などの描写も一間白く、全体に弓なりになったプロポーション、背後に人を感じた目の動き、どれを取り上げてみても写楽の実力がにじみ出ている絵で、細判作品のなかでも優秀なものといえましょう。
吉田咲二氏は四立て目で富田介太夫が川島治部五郎に殺される場面の治部五郎と述べていますが、鈴木重三氏は治部五郎が富田介太夫を闇討ちにかけ立ち去るところで、この図と組み物になる左方の介太夫の子息、兵太郎の差しつけた提灯の光を避けて、見られまいとそむけた横顔を袖で隠したポーズと解する方がより妥当な解釈であろうとさらに細かぺ分析のもとにこの作品をみています。この作品のパックに黄潰しのものがあったとクルtrは述べていますが、鼠地にした方がよりこの場の雰囲気をかもし出せると考えられましょう。
東洲斎 写楽 Toushusai Sharaku