四代松本幸四郎の新口村孫右衛門と中山富三郎の梅川 写楽
大判錦絵36.2×25.2cm
落款:東洲斎寫楽画
板元:蔦屋重三郎極印
所蔵:東京国立博物館
大和の新口村の豪農孫右衛門には忠兵衛という息子がありましたが、大阪の飛脚屋亀屋へ養子に行き、新町の越後屋の梅川と馴染み、そのため封印切りの大罪人となってしまいました。忠兵衛は梅川を連れて死出の旅へと心を決め、最後の暇乞いに父を訪れます。近松の傑作『冥途の飛脚』に発する歌舞伎『四方錦故郷旅路』大詰めの新口村の場です。
梅川の舅孫右衛門に対する思いやりが自ずと出て、切れた草履の緒を梅川は懐紙をこよりにしてなおそうとしています。梅川のこの世での別れをこめた愛情こまやかなしぐさ、これが紅雲母のパックの温かさの上に描かれ一層効果的です。こよりの手つきの描写には女性の色気が見られ、草履や懐紙などの道具の描写も珍しく、これらが合わして人情の美しさを感じさせる場面となっています。幸四郎の着ている合羽の模様は、五代幸四郎から始まったという定紋四花菱を模様化したもの。着物の模様は幸四郎独自の高麗屋格子です。
東洲斎 写楽 Toushusai Sharaku