風俗三段娘・中品之図 歌麿
大判錦絵 38.0×25.4cm
落款:歌麿筆
板元:若狭屋与市
所蔵:東京国立博物館
これはシリーズというより「上品之図」、「中品之図」、「下品之図」の三図で、一セットになる作品です。
本図は中流の部に当たる作品で、水盤や衝立を描いて、歌麿の作としては盛りだくさんの構図となっています。しかし夏の薄い白の紗か紹の着物を着て立つ、やや前かがみになった娘と、立て膝してすわる女性との姿態の組み合わせは、図に安定性をもたせる見事な構図です。頬のふくらみがややなくなった瓜実顔は、鼻の線がやや長く感じられ、またすわった娘の左手の描写がたくましいために、立った娘の顔と手のバランスにくらべて、観念的な描写に陥入っているといえます。配色も派手な色調で美しくはありますが、人物その他があまりにも画面いっぱいに描かれているため、余韻に乏しい印象を受けます。本図の赤の色料は、従来の紅とは違うペロリンといわれた染料系の色料のように思われます。
喜多川歌麿 Kitagawa Utamaro