四代岩井半四郎の浮き世之助下女さん実は左馬之助妹さへだ 写楽
間判錦絵32.7×23.0cm
落款:寫楽画
板元:鳥屋重三郎極印
所蔵:シカゴ美術館
『松貞婦女楠』の二番目狂言『合法太郎』の大詰め三番目の左馬之助妹さへだとみられるこの絵には、多少の役名考証に疑問をもつ研究者もいて、今後の研究がまたれています。
「婦人丸顔にして、声にりんと張有は、一生色香うせず、諸人愛敬の有相也。三年ここにかなしぼり、目黒の太夫さん、かはらざきの大黒柱。御堂の棟より高い誉れと申さん」は、この芝居に出た岩井半四郎を評した一文ですが、河原崎座の大黒柱とまでいわれたこの評語は、当時の名女形としての貫禄を賛したものでしょうが、この絵からは、半四郎の技芸的な厚味はうかがうことができません。写楽の作品に対して、カリカチュアであるといわれる理由は、この絵などからの印象をいうのではないかと思われますが、これから語りかけるものには、なんら精神的な重厚さなどはみられず、表面的ないわゆる漫画とみられるのも否定できません。ただ配色の面で爽快なリズムを感じさせるのが一助となっています。
東洲斎 写楽 Toushusai Sharaku