三美人図 歌麿
絹本著色 47.6×73.2cm
落款:歌麿画
横長の画面に、三人の芸者を配し、右の三味線と団扇を持つ芸者は、髪を”勝山”に結わせ、黒の紗の着物を着せて、彼女が他の二人より年上であることを服装であらわしています。他の二人は、ともに。島田髭”ですが、饗の張りが小さく、髪が大きい髪型は、寛政後半の流行であって、本図も寛政末の作のように思われます。
三味線の枯古に、また談笑の一刻をすごす、開放された水商売の女性たちの日常風俗ですが、歌麿は無背景とし、わずかに水盤を描いただけで、彼女たちの風俗や姿態美を描こうとしています。ことに三味線をもつ二人の女性の振り袖や単衣の描写では、藍または黒の陰彫を思わせる彩色によって、立体感、重量感を表現するとともに、夏の薄い布の質感さえ感じさせる描写法をとっています。
この賦彩法が、近代の伊東深水氏の美人画に活用されているように思われます。
喜多川歌麿 Kitagawa Utamaro