美人気量競・鶏舌楼雛鶴 歌麿
大判錦絵揃物 39.9×26.4cm
落款:歌麿筆
板元:高須惣七 極印
所蔵:シカゴ美術館
この同名画題の作品は、このほかに「五明楼滝川」、「五明楼花扇」、「兵庫屋雛琴」の三種がわかっており、吉原一の艶名をうたわれた五明楼すなわち扇屋の花扇は、寛政九年の春身諦けされていますので、それ以前の制作と考えられます。
図で明らかなように、ある研究家が歌麿の再婚によるという説を唱えるほど、歌鷹の描く顔立ちが大きな変化をみせていることに父付くでしょう。雲は摺りのバックに。ほっそりした雛鶴の半身像を両面の左に寄せて作両した構図が、そうした印象をさらに強めているといえましょう。仙絆の紅、胴着の緑、そして小袖の紫といった配色が簡潔で、すっきりした画面とはなっていますが、充尖感がうすい印象を与える。
この作品のパックは白雲ほ摺りですが、初摺りでは黒雲母摺りと考えられ、別の趣きを感じさせたことでしょう。人物左の余白は、俗に「ミミ」といって摺った際たち落とされる部分が残ったもので、愛蔵家の間では貴収視されています。
喜多川歌麿 Kitagawa Utamaro