東海道吉田 とうかいどうよしだ Yoshida at Tokaido.
現在の愛知県豊橋市吉田町を描いたもので、吉田城の城下町でにぎわった東海道吉田の風景です。室内を通して見える富士を描く、という珍しい試みがなされた作品です。富士が良く見える茶店で、ひと休みする道中姿の男女、わらじを直す人足、中央に茶店の女中など様々な人の様子が生き生きと描かれています。北斎の人物描写の上手さが見られます。
不二見茶屋からの富士眺望の図です。「礫川雪ノ且」と似たモチーフで、富士見窓の風景が一幅の絵のようになっているところが本来の狙いで、富士を「見下ろす」構図の一類型かもしれません。
指をさして案内をする茶店の女将と美人の視線を通して、浮世絵を見る者は富士と結びつき、富士世界を茶店の中に見ることができます。二人を乗せてきた駕籠かきが草鞋を木槌で打って柔らかくし、また汗をぬぐう様や、反対側の旅人二人が腰掛けてくつろぐ様子も含めて、富士(神霊)世界ということができます。以上を茶店の入り口の柱が額縁のように切り取り、いくえにも重なる画中画のようになっています。
葛飾 北斎 Hokusai Katsushika