名取酒六家選・玉屋内しづか 歌麿
大判錦絵揃物 37.0×24.7cm
落款:歌麿筆
板元:蔦屋重三郎 極印
所蔵:ギメ美術館
吉田咲二氏の『浮世絵事典』にも、また渋井清氏の『ウキョエ図典』にも収録されていない図で、新紹介の作品です。
このシリーズは、表題のように、寛政時代の名酒と人気のあった遊女とを組み合わせた作で、今日でいうならばCM入りの美人画というところです。従来「兵庫屋華妻-坂上の剱菱」、「大もんじや内浅ぢふ1木綿屋七ッ梅」、「若那屋白露-木綿屋の男山」、「角玉屋内小むらさきI山城屋の山やま」の四図がわかっていましたが、本図を加えて五図となり、未見の一図で完璧なものとなります。ところでここに登場した遊女のうち「大文字屋の浅ぢふ」は寛政九年春、また「若那屋白露」は寛政九年を最後に『吉原細見』から姿を消していますので、このシリーズの制作時期は想像できましょう。
黄渋しのバックに緋毛艶がはえ、正装したしずかの黒の打ち掛け、大きく結んだ豪華な前帯の織りなどの衣裳美が印象的です。そして誰かに話しかけるような彼女の表情も生き生きとしています。
喜多川歌麿 Kitagawa Utamaro