梅の枝折り 春信
中判錦絵 26.9×20.9cm
落款:なし 板元:不明
所蔵:山種美術館
上塀越しに伸び出る梅の枝を、侍女の背を借りて手折ろうとするおてんばな町娘。雪持竹の模様をつけた紅色の振袖姿が、灰色の上塀や侍女の着る媚茶色の地味な小袖と対比して、はつらつとしたn口春のはなやぎを発散しています。また塀に塗り込められた平瓦は、見る人に明晰な印象を与える幾何学的な図案を作り、よどみない曲線でデッサンされた美人たちの姿態を、一層やさしくきわだたせています。
春信の紅摺絵期の作品に、「于折らずに兄よ梅が香の夕化粧」の句賛をもつ、「羽根つきにの図がある、追羽根のつきあいに興じる少な二人とともに、本図とほとんど同じポーズで、梅の枝にかけてしまった羽根をとる女たちが描かれており、錦絵の本図がこの図を原図としたことは明らかです。春信は、他の作家からの頻繁な図柄の借用とともに、こうした自作品における同一図柄のくり返しも、しばしば行っているのです。
鈴木 春信 Suzuki Harunobu