武州玉川 ぶしゅうたまがわ Tama River in Musashi Province.
現在の山梨県・東京都・神奈川県を流れる多摩川を描いたもので、六郷のわたしがあります。一見単純な構図に見えますが、近景と遠景のバランスなど、実は計算し尽くされた作品。特に美しいのが、川面の水の表現です。水面が白く輝いているような濃淡をつけ、実は細波も絵の具をつけないで摺られた、空摺りで表現されています。
近景の岸辺、中景の玉川、遠景の富士という三層の景色を繋ぎ合わせたシンプルな構図です。そこに渡し場があり、渡し船が対岸に進み、手前では馬子が荷物を運んでいるようです。川に架かる橋や渡し船は、此岸と彼岸を結ぶものとして、象徴的意味を持たされることが多いと言えます。
葛飾 北斎 Hokusai Katsushika