尾州不二見原 びしゅうふじみがはら Fuji View Field in Owari Province.
現在の愛知県名古屋市郊外、富士見原を描いたもので、遊郭や武家の別宅が存在する名勝地として知られていたそうです。北斎が幾何学的構図を好んで使ったことを説明する時に必ず登場する作品と言えます。丸い桶を通して見える三角の富士。「桶屋の富士」とも呼ばれ、人物や桶の描写も非常に細かく、本シリーズ中の傑作です。
近景で桶職人が無心に仕事をしており、その空間が丸く縁取られていることに深い意味があるのです。その空間の中には、富士と職人とが一緒に存在する。庶民生活の中に富士世界が具現化する瞬間です。
葛飾 北斎 Hokusai Katsushika