甲州伊沢暁 こうしゅういさわのあかつき Dawn at Isawa in Kai Province.
現在の山梨県笛吹市を描いたもので、本図の伊沢は、現在の甲州街道の石和(いさわ)にあたります。笛吹川の川岸にある宿駅で、川沿いにある石和の朝を描いており、暁という言葉にふさわしく、早朝の空気が見事に表現された作品です。朝早く宿場から出立する人の様子が、朝霞の向こうに見える富士のシルエットの前に、生き生きと描かれています。
右手前に小高い山が描かれ、そこから富士を遠望しつつ、宿場町を鳥瞰する構図となっています。この構図は、作品を鑑賞する者は、頂上世界から世間を見下ろす視点の側にいます。石和の宿場の暗さと富士背景の空の明かるさとの対照が夕暮れ時の宿場町風景です。
葛飾 北斎 Hokusai Katsushika