定家の道行 無款(清倍)
大々判丹絵 58.1×29.9cm
落款:なし 板元:不明
所蔵:ミネアポリス美術館
シカゴ美術館の「初期浮世絵展カタログ」には、「市河団十郎、あらし喜世三郎、定家生嶋新五郎の道行図」(あぶら丁七郎兵衛板)がのせてあります。それとはなはだ近いのが版元名を欠くこの図で、「ていか公」「大江さへもん」「のわけ」と書き込みがあり、背景には「せみ丸わらやのとこ」「ひゑいさん」「坂本さんわう」「しかから崎一つ松」など注記した名所を描いています。吉田暎二氏は「宝永七年(1710)十一月山村座の「神力定家東遊」を描いた作と見られる」とし、野分は坂田荻之丞の役だとされる。それには詳細な考証が付記されています。「しかしこの絵には役者名も役者の紋章も記されていないから役者絵ではないといえるかもしれない」とも言うています。「ていかの道行」とて江戸四民の間に伝承した物語を描いたもの、署名がなく、年代や作品から初代清倍に帰せられてはいますが、筆線にはやや異質的なところもあり、断定は困難でしょう。
鳥居清倍 Torii Kiyomasu