小鳥と美人と籠を持つ娘 清倍
大々判丹絵 54.0×31.6cm
落款:鳥居清倍 板元:中嶋屋
所蔵:東京国立博物館
放生を描くものでもあろうか。鳥かごのふたをあけたものを捧げもち、美人は小敵を指先につまんで、いま放そうとしているようであります。
鳥居清倍と署名しています。初代清倍独特な肥痩強弱・遅速筆圧などいう毛筆の働きを強調した描写で衣文の描出をまとめています。それは写実には程遠い観念的な様式ではあるが、そのような誇張が苦にならず別に何とも思わないのは、毛筆に親しんできた日本人の通性と言うものでしょう。線による形態の描出は、もともと客観界には存在しないことであります。したがりてそれはきわめて主観的な意想の描出に外ならません。このような絵には衣裳図文も細麗な花文などは避けられ、印象的な丹彩がマッチするわけであります。それにしても容貌や手足が何と細い線でしょう。いささか貧困にすぎる表現ではあるまいか。
鳥居清倍 Torii Kiyomasu