四代市川団十郎の悪七兵衛景清 清満
細判紅摺絵 31.7×14.2cm
落款:鳥居清満筆 板元:山城屋
所蔵:リッカー美術館
明和四年(1767)正月、中村座上演の『初商大見世曾我』に出演した四代目市川団十郎の景清を描くものと考証されている(吉田暎二氏)。娘と妻を枷にして口を割らせようとする畠山重忠、青山の琵琶と青葉の笛の所在を知ろうとして牢獄の景清をせめあぐんでの凶行であります。ことここにいたって悪七兵衛金剛力を揮って牢を破るという、怪力無双の見せ場でしょう。
この絵は鳥居家三代当主清満が三十三歳のとき描くもので、明和四年といえば春信や文調らが錦絵を開発し、文詞や春章は俳優の個性描写に新工夫をこらしていた新時代でありました。そんな時に出たこの絵は紅摺絵にとどまっており、作品も疎剛な感じをまぬがれないが、そこに慮外の力感が観取されて見事であります。様式的には鳥居流役者絵の典型的な描写であって、その類型性がむしろ歌舞伎劇の莫骨頂を象徴的に感得させるから、妙であります。
鳥居清満 Torii Kiyomitsu