浮絵仮名手本忠臣蔵 五段目 政美
大々判錦絵 揃物 32.6×44.5 cm
落款:北尾政美画 板元:鶴屋喜右衛門 極印
所蔵:東京国立博物館
師匠重政が一面に新奇好みのところがあって、歌川豊春が積極的にオランダ絵の木版画化に立ち向かって、浮絵の風を一変したころ、それほど熱意があってのこととは思えませんが、「臥竜梅」、「玉山祭」などいった浮絵を作りています。その薫陶をうけた政美にこの絵のあるのは不思議ではありません。
同門双璧の一人政演が文墨の俗界に広く活躍したのに対して、政英は寛政六年には津山侯のお抱絵師となり、門戸を高きにおきました。彼の錦絵は天明中期ごろからのことで、当時清長・歌麿・栄之・春章・写楽など巨匠ひしめく中で、はかばかしい成果はあがりませんでした。武者絵や浮絵といった二次作品に甘んじていたようです。
浮絵といっても通常のもので、光るところは認められないように思われます。だがこの絵では北斎もそうでしたが、舞台を実景風に拡大して新味を出しています。その土披流水にみる細巧な線描は銅版鏤刻を追っていましょう。
北尾政美 Kitao Masayoshi