青楼名君自筆集 瀬川 松人 政演
大々判錦絵 揃物 36.4×48.8 cm
落款:北尾葎斎政演画 板元:(蔦屋重三郎)
「吉原傾城新美人合自筆鏡」というのが題簑ですが、内題に「青楼名君自筆集」ともあります。大形の折り帖一冊で、吉原大門口にはじまり、この画帖出版の天明四年ごろ、花魁名君とて全盛をほこった吉原の遊女を、その室における盛装の姿・身のまわり調度品などと共に燦然かがやくばかりの美しさで摺り上げています。政演は遊里にくわしく遊女を妻としたほどですから、ここに描かれる十四人の女たち(滝川に花扇、瀬川に松人、雛鶴に丁山、東家に九重、歌川に七里、ひと本に誰袖、濃紫に花紫)も、その容色や風姿だけでなく、気心や教養・知性までも知りつくして描いたことでしょう。
各佳人の上部にはこの女性らが自筆で和歌を書き入れるという破天荒の着想です。かつて茶香琴棋の諸礼に通じた名妓、吉野や高尾の古事を言外に秘めてもいましょうか。四方山人序、朱楽菅江の該、蔦屋の刊行となっています。二年ほど前から一枚絵として順次出したものをまとめて絵本にしたと言われますが、どうでしょうか。
北尾政演 Kitao Masatora 山東京伝