縞衣裳の美人 国政
大判錦絵 37・8×25・0cm
落款:國政画
板元:X
所蔵:酒井コレクション
国政の美人画錦絵ははなはだ数少ませません。そしてそれも七分身の描写がほとんどですが、この図は珍しく大首絵で、彼のこの類似様式作品は私はまだ他に見ていません。首筋の細さ、襟元などは師豊国の影響を見、構図には栄之門流の大首絵の感化が想察されますが、全体に自己独特の特色を出そうと試みているようです。髪型と顔面部が、手や胴に比してかなり大きいです。役者大首似顔を得意とする彼の個癖がこのような所に表れたのではないでしょうか。胸から下には、何か動感を出すようポーズや描線に努力を払っています。衣紋の線が起伏ある波を打って右上から左下へとうねり、この美人の体を動きの方向を示し、帯の線でこの流れを受け支えて全体の構図をここで締めくくっています。縞模様を選んだのも、動感助長に効果ある点を考えたものらしいです。帯の芭蕉葉が季節感を催させ、かなり考慮して作った絵のように受け取られます。作画期は寛政八年頃と見られます。
歌川豊国 Utagawa Toyokuni