太々講二見ヶ浦詣 春山
大判錦絵 三枚続 54図35.9×23.0 cm 55図36.1×24.2 cm 56図35.9×24.2 cm
落款:春山画板元:西村屋与八
所蔵:東京国立博物館
江戸末期になると上方見物や伊勢詣りの旅人が東海道をのぼりました。一生に一度は伊勢参宮をしたいというのが、今は昔の庶民の願いであったことを思いますと、隔世の感なきを得ないでありましょう。伊勢詣りの人は勢州二見ヶ浦に出て夫婦岩の奇勝を楽しんだのです。したがって広重や国貞、北寿などの風景中に扱われていますし、歌麿も晩年作にこれを写しています。
春山のこの作は、彼の「大川端夜景」と共に代表作とされ、古来著名です。「太々講、江戸講中八拾八人粗」とみえる立ち番板が茶亭の竹垣に、寄せてあるのも、今のホテルのフロントをしのばせます。御休所をたち出でた脂りの人々は、子供連れは馬の背で、徒歩わたるもあって、女が主な、いとも長閑な旅風情です。天明四年ごろを盛期の鳥居清長の作風を心から暮ったといった作風で同門の春潮と同趣同好であるが、作は多くありません。
勝川春山 Katsukawa Syunzan