東福寺伽藍図 とうふくじがらんず Tofukuji temple Figure. 雪舟 Sesshu
重要文化財 紙本淡彩
一幅 83.4×153.0cm
京都 東福寺
現在ても京都東山の山麓に偉容を誇る東福寺は、鎌倉中期からこの方、その伝統と歴史を物語るように、広い境内と禅林特有の簡素さの中に、堂々とした風格を備えている。その全景を俯瞰的に捉えたのが、この図てある。室町中期頃の様相を、記録的に描いている。仏殿、塔、廻廊、鐘楼、諸塔頭などの伽藍配置に留意して、それを克明なパノラマ式に描いて見事てある。
しかし、それだけに実測的な画而てあることが、絵画的効果や芸術的効果を幾分、不充分なものにしている。顧みれば、雪舟にとって大変縁の深かった寺てあり、縁者、友人(季弘人淑)らの要請によって描き出したものと考えられる。制作に当って彼は若き頃友を訪ねた仏殿の偉容などを思い出しながら、作両に余念がなかったと想像される。建造物に重きがおかれているため、丘陵や樹木などは簡素化した筆致てまとめられ、雪舟らしさがあまり感じられない。以前から、雪舟筆とは断定されていないが、楼閣の屋根の描写などには、よく特色が生かされており、無闇に否定することは出来ない。描かれた年代については、明瞭な根拠となるものがないが、彼が周防へ行く前に描いたのてはないかと推定される。図上には別紙による了菴桂悟の賛がある。これに永正二年(1505)の年記があるが、これによって下の絵を永正三年(1506)頃とするのは、当を得ていないように思われる。むしろ、画の方が先て、後了菴がこれを見て、別紙に書いた賛を貼り込んだものと思われる。或いは、別々にあった画と賛を、たまたま一緒にして保存してきたかとも思われる。
Sesshu 雪舟