猫とたわむれる遊女 懐月堂度繁
大々判丹絵 56.1×29.1cm
落款:日本戯畫懐月末葉度繁図
板元:伊賀屋勘右衛門
所蔵:シカゴ美術館
「洩草駒形町まさるや御菓子所」とある箱に腰かけて小猫をあやしている遊女を描く。画者の度繁が懐月堂の本流であることはわかるが、おそらく安度の門人であろうという以外にはこの人の閲歴も事蹟もわかっていません。また画蹟としては肉筆の美人画と、やはり美人を主題にした数種の版画を知るだけであります。
この種の初期版画には墨一色摺りのものと、同じ線で手彩色を加えたものとがあって、どちらが画家の意図したものか判然としない点もあります。だがこの図でみますると、大がらな筍や唐草くずしの図文は、施彩を予想しての作ゆきのようではあるし、衣裳の大がらなのに比べていささか貧弱な帯は、施彩がなくては、不調和で持ちそうにません。線描の彫咸には冴えたところがなくて整理されてもいないが、それだけに撲茂としたプリミティヴの良さがあると言えよう。稀観の名作であります。
懐月堂度繁 Kaigetsudou Dohan