芝居狂言浮絵根元・中村座 無数(政信)
仮名手本忠臣蔵
大々判漆絵 32.5×45.0cm
落款:なし 板元:奥村屋源六
所蔵:酒井コレクション
通塩町奥村屋源六板元とあり、赤い「瓢箪」印を跨した、浮絵法による中村座の観劇図であります。二階桟敷もある広壮な劇場内部をバースペクティヴの技法で大観する。下の聯枡席の人物や花道から舞台に、かけての一視角、両棧敷の構成の一視角、花道わきの一視角、口上を述べるあたりからの一視角、それから忠臣蔵の天川屋儀平を、演出する唐破風のうちが、役者を比較的に巨大に描く視角など、一見しては遠近透視の画法でありながらまったく統一空間とはなうていません。これはバースペクティヴの何たるかを、まだ理解しないことから起こる錯誤であるという見方もできないことはなかろうが、小児画ではあるまいし、統一視覚は承知しきってはいても、物質併存の客観体系ではなくて、日本人特有の個別化的
な興趣、空間の主体価値体系観からくることにちがいません。
奥村政信 Okumura Masanobu