湯上り美人と鶏 政信
大々判紅掴絵 43.8×30.9cm
落歓:芳月堂奥村文角政信画 板元:不明
所蔵:東京国立博物館
汗になる 鳥に悋気の 夫婦徒
据風呂が描いてあるから、屋敷の中の奥まった室でしょう。湯上がりの女は浴衣を肩にかけて濡縁に立ち現われると、一つがいの鶏がいて、雄がにわかな美形にみほれて「コ、コ」と鳴く。女は悋気の眼を細くするというのだろう。
紅摺絵であります。紅摺の印刷法は俳書などには早くからみえるが、一枚絵に用いて手彩色時代を脱したのは何年か、誰がはじめか明らかでません。だが奥村政信は丹絵・漆絵・紅絵・紅摺絵と、木版技巧進展を自らの業紋の上でたどっています。延享・寛延の頃と見られています。またその頃から政信の外にも石川豊信らが、世に「あぶな絵」と俗称する半ヌードを描いて世好に投じた。この絵はその代表的な作品であるが、発想にはエロ意識が先ばしっているところに、浮世絵の宿命がありました。
奥村政信 Okumura Masanobu