三代沢村宗十郎の孔雀三郎間 写楽
判錦絵31.9×23.3
落款:寫集画
板元:蔦屋重三郎極印
所蔵:シカゴ美術館
三代沢村宗十郎は当時の立ち役における第一人者であり、大柄な体躯と人品のよさに加えて男振りもことのほかまさっていました。京阪にhることも三度に及んで、東西両劇壇での最高人気役者の一人でもありました。年間給金八百両という高額をもらっただけあり、時代附話とも兼ねた上に、和事を最も長所としていました。屋号俳名として「紀伊國屋納子」と書かれていますが、「紀伊國」は屋号として正しいですが、俳名の「納子」は誤りで、「訥子」でなければならず、写実的描写をなす写楽にしてこのような誤字を見逃していたということは、どう考えるべきか判断に苦しみます。その上部の模様は宗十郎の替紋で、環菊の紋です。
『閏訥子名歌誉』は、この芝居の主役であった宗十郎の俳名訥子と上演月の十一月が閏であったのをかけて外題を決めたと考えられます。写楽の描写力がいかに弛感してきたかを痛く見るものに感じさせる作品で、生気がなく、マンネリ化した作品態度を思わせます。
東洲斎 写楽 Toushusai Sharaku