風流六寄仙・僧正遍昭 春信
中判錦絵 28.0×21.0cm
落款:春信画 板元:不明
所蔵:リッカー美術館
石造りの大鼓橋に立った二人の女が、蓮の葉が敷きつめられたように浮かぶ池の面をながめます。陽射しもようやく強くなる初夏のころ、行楽の足をのばした女たちは、扇に風をいれながら、赤い蓮の花に目を休めます。春信の錦絵には、春は桜を愛で、夏は水辺に憩い、また秋の紅葉、冬の雪見と、行楽や遊山にうかれ出る江戸市民の姿が、しばしば描かれます。
明和ごろの江戸は、時ならぬレジャーブームの到来に見舞われ、人々もここそこに名所をたずねて、軽く足を運ぶこととなったのでしょう。いわゆる「田沼時代」も初期の、そうした明るく開放的な気分が、いかにものどかにゆきわたった図です。
図上には、「風流六爵仙 僧正遍照 はちす葉のにこりにそまぬ心もてなにかは露を玉とあさむく」と記される。「風流六埓仙」のシリーズは、六歌仙の和歌を見立てた当世風俗画で、現在「喜撰法師」を除く五図が知られています。
鈴木 春信 Suzuki Harunobu