四季山水図 Four Seasons landscape view 雪舟 Sesshu重要文化財 絹本着色 全四幅 各149.2×75.8cm 東京国立博物館
春夏秋冬を四幅形式に描き表わすことは、中国ては北宋時代から行なわれていて、その歴史は古い。雪舟も、この形式に倣って描いたものてあるが、款記に「日本禅人等揚」とあるところから、恐らく在明中に、この原本となるものに基づいて描いたものてあろう。
今、その原本を何によったかは明瞭に出来ないが、戴進(宣徳年間活躍)あたりの画風によったと思われる。図中に「光沢王府珍玩之章」と読まれる鑑蔵印や、その他印文不明の二穎が認められる。いわば雪舟在明期間の、修業中の制作態度を知るに良き資料てある。
さらに構図法や画法においても、新画様の制作に努めたことを物語るものて、ただ観光に時を費したのてはなく、滞在中も制作に余念のなかったことが知られる。しかも、かつての相国寺画壇にあったときと異なり、現地にいてまさにその壷中に珠を拾うような気持ちて忠実に、しかも自力を充分試す、よき機会てあったわけてある。この時期に、後期の基盤が出来上がったものとして、まことに意義深いものがある。
大画而面制作に寄せた労作ぶりや、的確な画法は、微動だにしない研究心の旺盛さを制作て示したものてある。特に冬景図は、戴進筆「山水図」(冬)があり、この筆法からヒントを得たことを知るに相応しく、池寛様の筆法及び水墨法を示している。なお図中主山を堂々と配置し、そこに粗削りの皺法を表わし、また樹棺描写は細密て、しかも量感を添える墨色の強弱を用いるなど、まことに緊密な筆の重ねに、中国技法をつぶさに写し取ろうとする意欲が、ありありと見受けられる作てある。
在明中の、先人の画風や画法への厳しい執念にも似た態度には、敬服の他はない。現今、「-等揚」と楷書て落款のある遺作の中ては、最も早い時期に属する作品として、注目に価する傑作てある。
Sesshu 雪舟