拙宗等揚筆 岩に五位鷺図 せっそうとうようひつ いわにごいさぎず Sesso Toyo wrote. Black-crowned night heron of rock image. 雪舟 Sesshu
紙本墨画 一幅 140.3×55.8cm
この図は、一見簡略で、素人画的と思えるが、よく見れば、技術的に相当熟達したあとを偲ばせでいる。粗略な岩の表現と、何の意味もないような丸い惨みのある点苔は、岩その物の量感が示され、岩上の五位鷺は嘴、冠毛、翼、脚に濃墨を使うだけで、その形をまとめでいる。上部、左右の空間には意識的に淡墨をはいで、冬枯れの水辺を思わせる寒々とした、静寂な空気をあたりに漂わせでいる。軽妙な芦の描写も、この空間を厳しくおさえている。落款の書風は、まことに簡略化されたものて、「等揚筆意」と読める。この書風は、「探幽縮図」にもあり、一種の略し字的な書風と考えられる。印は「等揚」てある。小幅てあるが、まとまりのあるこの図は、雪舟初期における各種の画様を究め、習熟した墨技を修めていたことを物語っている。鋭い気魂を示す水墨画の雰囲気を、まだ大成されない雪舟画風への過程を示すものとして、貴重な作品てある。
Sesshu 雪舟